もともと私は、遺品整理とは違う業界で働いていました。
もっとも、「遺品整理」という言葉が認知されてきたのが
ここ1,2年のことなので、多くの遺品整理屋さんは
他の業界から始めた方も多いのではないかと思います。
私の場合は、10年以上、音楽・楽器業界で働いていまして、
コンサートやイベントのプロデュースから設営や、楽器の運搬や引越し、
楽器の販売、音楽教室管理などを手がけておりまして、
このときの経験で、運送や整理業についてはスキルや人脈があったため、
遺品整理業を始めるに当たっては、やりやすかったのではないかと思っています。
ただ、いくらとっつきやすい業界だったとはいえ、
音楽業界から遺品整理業界という転身をするには、
大きなきっかけがあった・・・今になって、そう思えてなりません。
まだ、音楽業界で働いた頃、仲の良かった女性がいたのですが、
彼女は若くして、癌によってこの世を去ってしまいました。
あまりに突然の訃報で、私自身、信じられないのと、言いようもない悲しみに襲われたのですが、
彼女のお母様から「遺品となったパソコンに彼女のブログのデータが入っているので
取り出してほしい」とお願いをされました。
ブログの内容は彼女の闘病記だったようで、
彼女がそのようなブログを書いていることは知らなかったのですが・・・
私は、このお母様からの依頼を断ってしまいました。
理由は、彼女の闘病記という過去に触れることで、
また切ない悲しみに襲われることに恐れをなしてしまったのです。
その後、私は10年以上勤めた音楽業界を去り、
1年ほど遊び歩いたり、外資系のネットショップで働いたりしたのですが、
ずっと、お母様の依頼を断ったことを悔い、
それと同時に「たとえ肉親や親友、恋人でも、遺された遺品を整理することができない場合がある」
「そんなときに、第3者が、それを代わりにおこなうことができるサービスはないのだろうか」
ということを、ずっと考えていました。
そして、サラリーマンを辞め、出張専門でパソコンに関するありとあらゆる問題をサポートする
「パソコンかけこみ寺」を設立し、真っ先にサービスの一環として、
故人のパソコンから想い出の画像や動画、日記などを取り出す
パソコン供養・パソコン遺品整理というサービスを始めました。
そして、もっと幅広い遺品整理ができるよう、
現在の遺品整理社を立ち上げた・・・そんな経緯がありました。
パソコン遺品整理は今も多くのご依頼をいただいており、
先日もHBCテレビで紹介されましたが、
一人でも、多くの遺族の方の、触れられない想い出を代わりに整理する・・・
あのとき、自分自身が彼女の遺品整理ができなかった・・・そんな想いを増やさないためにも
自分の仕事がある・・・
そんなことを思っています。
※個人の特定を防ぐため、一部内容を変えてフィクションとして書いていますのでご容赦ください